上伊由毘男のブログ

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「名ばかり自立支援」がさらに生活困窮者を追いつめる

一見いいニュースのようなのだが。
九州最大規模ホームレス支援施設、福岡に開所 : 週間ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

対象は自立の意志がある路上生活者。入居は最長半年間で、18日から受け付ける。家賃や食費などの利用料(月額9万1000円)は、入居者の生活保護費を充てることにしている。

それは貧困ビジネス並の搾取ではないのか。
しかも、期間は最長で半年だと言う。言いかえれば「余命半年」を突きつけられたも同然だ。
ぶっちゃけて言えば、仕事より人が多くて雇用主側的には選び放題のこの雇用情勢で、ホームレス経験者を雇う会社がどれほどあるというのだ。そうでなくても仕事がないというのに。
そんな状況で、半年で捨てられ、あとはのたれ死ねと言う事か。
行政などもそうだが、そもそも「雇用対策」という考え方が間違っている。
対策すべきは、貧困であり、生活困窮者である。
おぎゃあと生まれてきた以上、人は人として生きる権利、生存権があるのだ。これを否定するのは「お前死ね」って言ってるのと同義だからな。
だが生存権を持ち出すと必ず「そこまで面倒見なきゃなのかよ」とか「タダで税金をむさぼる社会の寄生虫」とか言う意見が出てくる。
俺が言いたいのは、誰でも(俺やあなたも)いつ貧困や生活困窮に陥るかわからない、だからこそその備えは社会全体で行われなければならないと言うことだ。
ヨーロッパなどでは、失業しても生活に困らないように長期、あるいはほぼ無制限で何らかの給付があるという。決して絵空事や共産主義の話ではないのだ。
Afternoon Cafe 社会保障・福祉に、やっかみ妬みがついてまわる社会

分相応を美徳として求める社会では、公的支援を受けることは、国や社会からのありがたい温情、恩恵を受けることだ、という発想になります。

高校無償化に否定的な人々は、無償化は「国からの恩恵」と捉えている節があります。
「税金で学校にいかせてもらうんだから、勉強サボって成績の悪いヤツや素行のよくないやつはドンドン退学にするか授業料を請求しろ」と言った具合です。

コレが歪んで高じると、
「日本という共同体から受ける恩恵に何ら感謝もせず、その共同体から金をむしりとることしか考えていない」「国から恩恵を受けているんだからお上に逆らうんじゃない、この恩知らずめ」なんていう発想にもなっちゃいますね。

社会保障福祉を受ける人々に対しやっかみ妬みのような否定的感情を抱き、足をひっぱるような草の根の風潮では、現在の格差貧困も国の怠慢への怒りに変わらず、分相応の「致し方ないもの」として諦め受け入れていってしまうのではないでしょうか。

その否定的感情が、冒頭のホームレス支援施設を「人生の最後通牒」にしてしまう。こんだけ税金つかってこれだけ面倒見てやったんだから仕事決まらなくても食えなくても死んでも問題ないよな、と、例によって「自己責任」化させられてしまう。
何度も言うが、今は仕事より人がずっと多い状態だ。椅子取りゲーム状態では本人の能力など関係なく、仕事に就けない人は発生する。
そうしたときに、「じゃあ死ね」っていうような日本でいいのか?正社員ですら平気で首を切られるご時世、次はあなたの番かもしれないのに。
ホームレス支援施設や公設派遣村のような期限などを区切ったアリバイ的対策ではなく、根本的に「働かなくても死なない社会」でなくてはならない。
確保しなくてはならないのは雇用ではなく、生活そのものだ。