上伊由毘男のブログ

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違法は違法なんだから法律変えるか取り締まるかどっちかだろ

なんでもかんでも自由競争市場原理でいいってんなら、もう法律も国家もいらないではないか。そんな北斗の拳状態をお望みなのかこの人は。
ブラック企業を支えているのはブラック社員であり、それを生み出しているのはブラック政府である - Zopeジャンキー日記

つまり、いまの日本の雇用に欠けているものは、社員側においても会社側においても、まさに「市場原理」なのである。そして、その問題を生み出している責任は、労働者や会社という民間人にはなく、誤った制度設計によって労働市場を硬直させている政府にある。

それには同意する。

このように書くと、「悪いのはあくまでもブラック企業なのだから、政府が厳しく取り締まればいいのだ」という意見が必ず一定数出てくる。そのように主張する人は、ではブラック企業の基準とは何で、適正な労働時間とは1日何時間なのか、確信を持って答えられるのだろうか。

少なくとも残業代未払いや休暇を与えないなどの法律違反は取り締まられなければなるまい。それともこの人は「生活に困窮した人がコンビニやタクシーを襲うのは合法か違法か」に確信を持って答えられないのだろうか。

仕事が遅くて、他の人の2倍働かないと、他の人と同じ成果が出せない人がいるとする。この人に対して、「1日8時間以上働くな」といった規制をおこなうことは、「善」なのだろうか。この人は16時間働いてもいいから、他の人と同じ成果を出して、同じ給料をもらいたいかもしれない。あるいは、他の人と同じ8時間働いて、成果も半分、給料も半分でいいと思っているかもしれない。そんなことは、本人が決めればいいことだ。逆に、本人以外の誰も、それに対してああしろこうしろと命令する権利はないはずだ。

公正な競争はルールがあってこそはじめて成立する。同じ給料で16時間働くなんてのは労働力の不当廉売であり、8時間で働きたい人の足をひっぱるものだ。実際今の「サービス残業」「サービス休出」はこの状況だ。みんなで不幸になっていく。笑うのは雇用主ばかり。
ルールはみな同じように適用されなければならない。だから本人以外でも声を上げねばならんのだ。

「望ましくないもの」は単に禁止すればいいという発想は、人間は命令によって動かせるという発想と同じくらい安直であり、現実的でない。それは人間というものの性質を理解していないのだ。

人間の性質などそうやすやすと理解できるものではない。
無秩序で無制限の競争だけが「望ましいもの」を引き出すという考えは、野生の動物にはあてはまるかもしれないが、我々は社会生活を営む人間である。競争には公正で透明なルールが必要だ。「政府による間違った制度設計」が悪だと言うのは同意するが、それならそれで、フェアな制度設計を目指すべきだ。自由競争に任せたほうがいいところは規制を廃止するのもいいだろう。しかし、労働者やあるいは企業がサービスのチキンレースにならないようにするためには、一定の規制は必要である。
無秩序で無制限の競争の先に待っているのは、勝者による独裁なのだから。