上伊由毘男のブログ

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あらためて考えるF1の「安全性」クローズドコクピットは有りや無しや

本日からF1ロシアGPが開幕しますが、先週末の日本GPにおいて決勝レース中に大事故にあったジュール・ビアンキは、日本で治療を受け続けております。
今はビアンキの回復を祈ることしか出来ません。
その一方、こうした事故を繰り返さないために、様々な議論が起こっています。


F1マシンは今や世界で一番安全なクルマと言われるほどですし、今回の鈴鹿サーキットでの対応もなんら落ち度はなかった、という見解が一般的です。
ジュール・ビアンキの事故:なぜグリーンフラッグは振られていたのか? 【 F1-Gate.com 】

この事故は誰も責めることはできない。天候、ビアンキFIAの規約、重機の位置、消えゆく日の光、その他未知の要因が「最悪の状況」を生み出してしまった。


元F1専属医であったゲイリー・ハートスタインは、次のように述べているとのこと。
ビアンキの回復をただ待ち続けるしかないと専門家-TopNews F1 | 自動車 | ニュース | 速報 | 日程結果

ビアンキがまだ生きているということは、現在のF1がどれほど安全かということを示すものだ」

「私は、F1は非常に高度な安全基準に達していると思っている。だが、常に改善の余地があることも明らかだがね」


かつてあるF1関係者が「時速80キロのF1など誰が見るか」と言ったそうですが、F1あるいはモータースポーツの魅力に“命と隣り合わせ”のスリルが含まれることは否定出来ないでしょう。だからといって死人が出ていいわけはないですし、F1も安全性については長年様々な対策が行われてきました。
ローランド・ラッツェンバーガーアイルトン・セナが事故死した1994年サンマリノGP以後は、特に神経をとがらせています。ピットロードのスピード制限、コースレイアウトの見直し、ドライバーの頭部や首を守るためのプロテクターやHANS、トップスピードを抑えるためのエンジン関係の様々な規制、コーナリングスピードを抑えるための空力規制や溝付のドライタイヤ(グルーブドタイヤ)、等など。
近年話題になっている醜いノーズも安全対策の一環でした。接触事故の際、ぶつかったクルマのノーズがぶつかられた側のコックピット(頭部)を直撃する可能性があるため、ノーズを低くしようということで行われたのです。ですが、ノーズ低くしたらしたで、今度はぶつかった車両がぶつかられた車両の下に潜り込んでぶつかられた車両を宙返りさせてしまう(サブマリン現象)指摘もあります。


そうした経緯の中で、F1ではこれまで幾度と無くコックピットをキャノピーで覆うクローズドコクピットが検討され、今回の事故を機に議論が再燃しています。


フェルナンド・アロンソ、クローズドコックピットの再考を求める 【 F1-Gate.com 】

フェルナンド・アロンソは、2012年のF1ベルギーGPで危機一髪で大事故を逃れたが、その多重クラッシュは頭部保護の必要性をハイライトした。

「過去2年間のモータスポーツでの最大の事故の全ては頭部外傷だ。安全性で一番ではないパーツのひとつだろう」

「2012年のスパでの僕のケースでさえ、僕の頭にあと10センチ近ければ、僕は1コーナーで死んでいたかもしれない」

「テクノロジーを利用することができて、そこに可能性があるのであれば、クローズドコックピットは確実に無視できないと思う


にもかかわらず、今日まで導入されてこなかったのは、F1の伝統及ぶステータスにかかわる、と考えられていたからです。F1は50年以上オープンコックピットでやってきた、他のフォーミュラーカーも当然オープンコックピットだ、モータースポーツの頂点であらねばならないF1がそのように変容したら、それをF1と呼べるのか?と。
ですが、F1の伝統というのもずいぶんあやふやなものです。


ロブ・スメドレー、F1へのクローズドコックピット導入は容易 【 F1-Gate.com 】

クローズドコックピットの導入は、F1カーの基本的な特性についての議論を再熱させるだろうが、ロブ・スメドレーは、そこには何の問題はないと述べた。

「F1カーのルックスは変わるだろうし、そこには議論があると思う。現在はオープンホイール、オープンコックピットのレーサーだからね」

「フォーミュラを変えてしまうのか? 世界選手権が始まった1950年のクルマと2014年のクルマを比較すれば、あまり類似していないと思う」


50年前のF1マシンと見た目を比べたら、とても同じカテゴリのマシンとは思えないでしょう。それに、世界最高のドライバーたちが、速さのために最新技術の粋を集めたマシンで戦うからこそ、モータースポーツの頂点と呼ばれるのではないでしょうか。
ところが実際は、タイヤ交換を演出するためにわざわざ性能の悪い2種類のタイヤを両方使用するように決めたり、可変空力装置が長年禁止されてたにもかかわらずテレビばえのするオーバーテイクシーンのためDRS(可変リアウィング)と“オーバーテイクする場所”をわざわざ設けたり、挙句の果てには、チャンピオンシップの決定を遅らせ世界中のテレビ視聴者の興味を維持するためにと最終戦ダブルポイントなどと冗談みたいなレギュレーションが取り入れられました。実況は愛川欽也さんにしたらなお盛り上がるんじゃないですかね。


F1が世界最高のモータースポーツであるためには、安全性も最高峰であってこそではないでしょうか。ショウアップやテレビ映りといったサーキットの外の都合で、ドライバーが命を削るはめになるのは、あまりに悲しいです。
我々は、世界最高のドライバーの真剣勝負が見たいのであって、死亡事故が見たいわけではありません。


ジュール・ビアンキの事故で再び考えたいF1とマシンの安全性 - のまのしわざ

F1ファンはドライバーを死ぬのを見たいわけではなく、レースを楽しみたいだけです。むしろ事故はもう見たくない。