上伊由毘男のブログ

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企業が人を選ぶのは「当然」、労働者が企業を選ぶのは「甘え」

新卒の内定率が極めて悪いという報道が目に付く。
一方、学生の大手志向が強く、中小企業では会社説明会に人が来ないという話もある。
これを受けて、今新卒の内定率が低いのは学生のわがままであり会社を選ばなければ仕事はある、という話が出てくる。


企業は人を選ぶのに、なぜ労働者が企業を選んではいかんのだ。
新卒が大手志向なのは「会社なんて入ってみなければ本当のところはわからないだろうけど、大手だったらまともな可能性が高い」からだ。
それは企業が労働者を選ぶときに「採用してみなければ本当のところはわからないだろうけど、若くて新卒で学歴が良ければまともな可能性が高い」としているのと同じなのだ。
大手志向そのものを非難するのはお門違いだろう。


企業は競争に勝つためにより優良な人材を確保する、優良でない人材は不要で切りたいから解雇規制を緩和し雇用流動化しろという。なるほど。
ならば労働者の側とて、よりよい雇用条件の会社を選ぶに決まっている。
雇用流動化し労働市場を正常に機能させるとはそういうことだろう。
企業は労働者を選別するときは「競争」「市場原理」の名のもの雇用規制を緩和しろと言っておいて、労働者が企業や仕事を選ぶのを「甘え」と非難するのはあまりに一方的でダブルスタンダードな物言いだ。
やみくもに企業が「切りやすい」状態にしたらどうなるか。まだ記憶に新しい派遣切りの山を思い出してみればいい。


私は解雇規制緩和には賛成である。だがそれは労働者が不利にならないように、失業や無職を恐れなくてもいいように、包括的かつ十分なセーフティネットと一体の場合、のみだ。
労働市場の正常化は企業に活力を与え、労働者に選択肢(嫌な仕事はしない、ということを含め)を与える。
解雇しやすい状態は雇用しやすい状態でもあり、すなわち中途採用のチャンス増加につながり、それが新卒偏重の是正にもなる。


と、こうして、「働かなくて生きていける」セーフティネットの話をすると「働く人がいなくなる」というバカが出てくるが、「金よりも仕事のやりがいのほうが大事」というならば、セーフティネットの有無には関係ない。
「みんなが嫌がるけど誰かがやらねばならない仕事」は労働市場の正常化によって、賃金をはじめ労働条件が改善されるだろう。そうすればワーキングプアは死語になる。
労働者の生活が脅かされる状態でなければ労働者を確保できない、というのは、ワーキングプアという名の奴隷制を肯定することだということを忘れるな。